深川日記

演劇は劇場の中だけで行われているわけではない

それでも小劇団がプレスリリースを書いた方がいい理由

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 もしも、単純に動員を増やしたいんなら、俳優をたくさんキャスティングできる作品で、ダブルキャストかなんかにすればいい。たいていの小劇団はギャラなんて支払わないし、あまつさえ、チケットノルマまで取りやがる(かもめマシーンは、すごく少ないけど、毎回ギャラ出してるぞ!)。誰かが出てるとなれば、友達とか、知り合いは見に来る。そして、その誰かを出す際には、ほとんどコストはかからない。不条理だけども、こんな美味しい話もない。

 

 でも、まあ、そうじゃない意味で集客というものを考える。つまり、「友達でも知り合いでもない人に見に来てもらうために」ということだ。けど、小劇団には、金がない。だから、マスメディアに広告を出したりして集客をするなんて、できっこない。だから、どうするか? プレスリリースだ。

 

「こんな作品を上演するよ。面白いよ。だから、お前のメディアで取り上げたらいいんじゃね?」

 

ということを伝えるために、プレスリリースは存在する。もしも取り上げられれば、リリースの郵送料だけで、いろんな人に劇団とか公演を知ってもらうことができる。

 

「最高じゃないか、すぐやろう! これで、うちの劇団も爆発的な動員数だ!!!」

 

と考えるなら、あなたの頭はお花畑なので、制作の役割を劇団のほかの誰かに変わってもらったほうがいい。うちはプレスリリース出して、記事になっても動員数なんて200人とか300人の間をうろうろしてるくらいです。

 

まあ、そんな美味しい話を誰も見逃しておくわけない。数多の劇団だけでなく、企業でも何でも多くの人びとがリリースなんて送っている。そのうち、記事になるのは本当に限られた一部でしかない。それに、記事になったところで、足を運ぶとも限らない。メディアの記事を使って、どれだけあなたが劇場に足を運んだことがあるかを考えてみるがいい。ほとんどないでしょ?

 

ただ、初期認知とかには絶対に役に立つので、効果がないわけじゃない。10人とか、それくらいなら動員増もなくはないかもしれない。

 

■リリース送付先

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多分、今回の話でこれが一番役に立つかも。リリースをどこに送ったらいいか?

 

WEB

■下北沢経済新聞(下北でやるなら)

■CINRA.NET

■neoneo.web

STUDIO VOICE

 

雑誌

演劇ぶっく

■悲劇喜劇

■シアターアーツ

 

新聞

■主要5紙+東京新聞

 

その他

■区報

 

とか。

もちろん、全滅なんていうこともあるから、載ったらラッキーくらいに思っておいたほうがいい。あと、ここも送った方がいいというものがあったら、むしろこっちが教えていただきたい。ナレッジシェアリングですよ!

 

■リリースの書き方

 

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僕はライターという職業柄、いろんなリリースに目を通す機会があるんだけど、まあ9割くらいはスルーします。その理由は枚挙に暇がないけど

 

「媒体の方針にあってない」「読者が喜んでくれなそう」「PVとれなそう」「そもそも、おもしろくなさそう」などなど。

 

 例えば、ギャラリーで行われる展覧会とかが、小劇場演劇と近いかも。「祈りをテーマに、3人の画家が行うグループ展です」とか言われても、記事にするとっかかりもないし、そもそも芸術系ってwebではそもそもPV取れない。じゃあ、あとは、作品の力が重要になる。

 

 でも、作品が面白いかおもしろくないかって、残念ながら、記事にするときにあまり関係ないんだよ(これがいいことなのかはやってて疑問)。もちろん、面白い作品を取り上げたい。けど、そうでなくても記事にはできるし、そもそも記事でその作品のおもしろさを伝えるということは難しい。だって、「おもしろいです」という感想には、公共性がないし、記事にはしにくい。なぜ面白いのか、認められているからか、それともテーマが特殊だからか、それとも別のものか、という話になる。

 

 だから、面白い作品よりも、面白くないけど「〇〇賞受賞」とかのほうが、記事にする側はありがたい。もしくは、「光市母子殺害事件をテーマにした作品を上演します」「バック・トゥ・ザ・フューチャーを演劇にします」とかのほうが「若者たちの熱い日常をテーマにします」よりも、書きやすい。

 

 

■プレスリリースを書いたほうがいい集客以外の理由

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 じゃあ、メディア受けしやすい作品を作りましょう、という風には僕は思わない。だって、できるなら、興味がある作品を書きたいんだ。それが人情だ。それに、何回も言うけど、メディアにちょこっと取り上げられても、そんなに集客は増えな。

 

 それでも、プレスリリースを書いた方がいいと思うのは、手っ取り早く対外的な視点を導入できるからだ。どうしても、創作の現場では、座組の内側の視点になってしまうし、それは劇場で上演をしたところで、演劇の内側としての視線に拡張されるだけにすぎない。プレスリリースを書くときには、そうじゃなくて、自分たちは、この社会の中で、どのような意味を持って、どのような意図を抱えながら演劇を上演するのかということを説明することになる(同様の理由から、助成金の申請書類も書いた方がいいと思う)。

 

別の言い方をすれば、(演劇業界ではなく)社会における自分たちの「価値」について考えるきっかけになるのだ。何を価値として提供できるか、それを考えないと、自分たちが何をやってるかわかんなくなる。わかんなくなった頃に、多分バイト先から社員にならないか? と誘われ、演劇から足を洗うんだ、きっと。わかんないけど

 

 

とまれ、もしも書いてないなら、一回リリースくらい書いてみましょう。ブログでつまんない稽古場日誌を公開するよりも、はるかに有効と思われる。

 

で、かもめマシーン「ニューオーダー」もぜひ、ご贔屓に!

北九州公演と東京公演がございます!